【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
さっきまで私を押さえつけていた男が、突然話に入ってきたので自分が危機だった事を思い出す。ようやく頭が冴えてきて、体も動くようになってきたから自分の足で立とう……相変わらず殿下に肩を抱かれたままだけど、かなり楽になってきたわ。
この男性は貧民街の住民みたいだけど、ちょっと違うような雰囲気を感じるのよね…………体格もいいし、ボロボロの衣服を着てはいるけど全くの物乞いって感じでもない気がする。同じ事を思ったのか、殿下がその男をまじまじと見ながら1つの提案をする。
「お前、少しは話が出来そうだな…………ここの話が聞きたい。適当な場所はないか?」
「……………………よそ者に話す事などない……帰れ」
何かを諦めた目…………私はこの目を知っている。出会ったばかりのソフィアが同じ目をしていた。この人たちはきっと皆、周りに裏切られ、蔑ろにされてきた人々なのでしょうね…………人を信じる事を諦めている、そんな目だわ。
殿下が何か言おうとしたのを制して、私が男性の前に進み出た。
すると私の腕を掴み「オリビア……」と名前を呼びながら首を振る殿下の目が、不安に揺れていた。心配してくれているのかしら…………安心させるように笑顔を向けてみる。頬を赤く染める殿下を見なかった事にして、男性に向き直った。