【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
戸惑い
私のお父様と面識がありそうなオルビスという男性は、私たちを「こちらへ……」と誘導し、倉庫として使われていたらしい建物へと連れてきた。ここでは一番頑丈そうな、建物らしい建物ね。
この建物まで歩いている間、殿下は無言で私の手をずっと握っていた。今も離してくれる気配はない。
前世で夫との関係に悩んでいた記憶は私に男性不信を植え付ける事になり、小説での殿下は婚約者がいながら聖女とあっさり結ばれるし…………男性に優しくされると正直ぞわぞわ寒気がしてしまうのよね。オリビアの結末を知っているだけに殿下とは極力距離を置きたい。
何よりこういう男女の甘酸っぱいやり取りに免疫がなさ過ぎて……どう接していいのか分からないわ。
「………………あの……」
(ここで殿下はまずいわよね…………なんて呼べばいいかしら……)
殿下は私の心を見透かしたかのように「ヴィルでいい」とこっそり言ってくれたのだけど…………殿下を呼び捨ては流石にまずくない?!
「君にそう呼んでもらいたいんだ」