【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 謝ろうとすると私の唇にそれ以上何も言わせないとばかりに自身の人差し指を当て、遮ってくる…………そして殿下は、自身の親指で私の下の唇をゆっくりなぞり、顔を近づけてきた……え………………これってキスされる?!
 
 思わずぎゅっと目を瞑ったのだけど、何も起きない。


 そっと目を開くと、すぐ近くに苦しそうな殿下の顔があった。何かに耐えるような顔………………殿下は自身の顔をふいッと前に向けると、私の唇に触れていた手はゆっくり離され、手綱を握った。

 
 「………………まずはマナーハウスに戻ろう……」

 
 絞り出すかのような声はそっと風に消え、馬は走り出し、スピードを上げていく。

 あのままキスされるのではないかと思った私は、勘違いだった事に恥ずかしさでいたたまれない気持ちになった…………恋愛偏差値低すぎるわね………………体中の熱が顔に集まっているんじゃないかってくらい顔が熱い。
 
 
 この人はこれから現れる聖女に惚れて、結ばれるんだから。
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