【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
……………………………………そうよ、学園に通わなくていいのだから、それを逆手に取ればいいのでは?
しばらくの間、療養という名目で領地に行きます、と言って公爵家を離れ、領地で過ごす。その間に殿下の考えも変わるだろうし、聖女も現れてお役ご免になるんじゃないかしら…………ちょうど領地を見てみたいと思っていたし…………一石二鳥じゃない。
うん、そうしよう。それがいいわ。
そんな事を考えていると、自室の扉がノックされた。
――――コンコン――――――
どうぞ、と返事をすると扉が開きマリーが顔を出した。
「お嬢様、王太子殿下がいらっしゃいました」
マリーが私に伝えに来てくれたので、ベッドで横になっていた私は上体を起こし、布団を整えた。
そうして扉から入ってきた王太子殿下は、それはそれは眩しくて神々しい光を放っていた。
なにこれ、どんなエフェクトがかけられているの……絶対この世の人間じゃないわ…………漆黒の髪が艶を放っていて、少し斜めに流している前髪から覗く瞳はアイスブルーがかっている。襟足は少し長めだけど整えられていて、鍛え抜かれているとすぐに分かる体は胸板が厚く、腰はくびれ脚はスラリと長いというバランスのいい体形だ。おまけに顔はクールだが王太子としての物腰の柔らかさを感じさせる微笑みを絶やさない。