【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
中から声が聞こえたので「失礼します」と言いながらそっと扉を開いて顔を覗かせた。そんな娘の顔が見えたからか、お父様はパッと表情を明るくして歓迎してくれる。
「どうした、そんなところに立っていたら体が冷えてしまう。さぁ、入りなさい。お茶を入れよう」
「いいのです、私が入れますわ!お父様はお座りになって」
帰ってきたばかりのお父様にお茶を入れさせるわけにはいきません。そう言わんばかりの娘の態度に顔が緩む公爵は、ニッコリと微笑み「じゃあお願いしよう」とソファに腰かけた。
お茶を入れながらお父様をまじまじと見る。紫色の髪がツヤツヤで美しい顔立ちにスタイルのいい体、紳士な振る舞い、陛下の信頼も厚い現公爵…………女性が言い寄って来ないのだろうか、と不思議になるほどだった。
オリビアの母親が亡くなってから、そういう話は全然書かれていないのよね……全く浮いた話がないっていうのも信じられないくらい優良物件なのに。
そんな事を考えながらお茶を差し出し、私も向かいのソファに座り、お父様に向き合う。
「体調は随分良くなったようだね。安心したよ……こんな時間に私の元へ来たという事は、何か話しておきたい事でもあるのかな?」