【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
 
 あの時、確かに命は尽きたはずだ――――――

 私は末期の乳ガンだった。3人の子供の母で、子育てしながら朝から晩まで働き詰め、病気に気付く間もなく働いていたら症状を発症し、時すでに遅しという状況に…………30代と若かった事もありあっという間にガンは転移し、そのまま亡くなった…………はずだ。
 
 私の周りで子供たちが泣いている姿を見たし、夫もそこにいた――――全く子育てに無関心で家事も無頓着な夫。
 
 そう、私はほぼ一人で全て回していたのだ。
 子供たちは可愛かったけど、夫に対しての気持ちは冷え切っていた…………最後も何か言っていたような気がするけど、大方私がいなくなったら子供たちはどうするんだとか、そんな事でしょうね…………辛辣な言葉しか出て来ない。来世があるのなら結婚はうんざり。子供だけ育てて生きていけたら、どんなにいいか。

 考えがぐるぐるしていると、ふいに扉がトントンとノックされる。自然と「はい」と返事をすると、扉がそっと開かれた。


 「あ、お目覚めになられましたか、お嬢様……」

 
 私の顔を見て心底ホッとしたような表情をした、この可憐な女性は誰?全く記憶にない可愛らしい女性の登場に戸惑いながら、彼女の顔を見つめていた。
 あまりにもジーッと見つめていたせいか、その女性は私の顔を覗き込み心配そうに額に手を当てる。

 「お熱は下がられたようですね……まだボーっとしますか?オリビアお嬢様」


 オリビア?今、オリビアと言った?
 私を見てオリビアお嬢様と言ったその女性は、何か間違った事を言っただろうかとキョトンとしている。
 目が覚めた時、確かに少しだけ違和感を感じていた……まさか、と思い可愛らしい掛け布団をよけてベッドから下り、立ち上がろうとすると眩暈で立ち眩みがする。
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