【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
「ありがとう、マリー」
ぽそっと独り言のように言った言葉は、マリーの持ち物点呼の声にかき消されていった――――
∞∞∞∞
そして出発の時間がやってきた。
お父様と公爵邸の使用人の皆がお見送りに来てくれて、馬車の前で皆に向き合う。
「お父様、皆、行ってまいります。」
そう言うとお父様が私に近寄ってきて、優しく包み込むようなハグをしてくれた。宝物を包み込むかのような優しいハグ。
「一人で旅立ってしまうんだね……寂しいなぁ――娘の成長というのは喜ぶべきものなんだろうけど…………」
そう言って唇と尖らせながら、涙目で子供のように拗ねるお父様の姿にクスリと笑いがこぼれる。