【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
宿屋で決意表明
ゼフの腕の中でぐったりしている女の子は、痩せ細っていて、唇には艶がなく「ヒューヒュー」と苦しそうに呼吸をしていた…………見るからに栄養失調よね。私のいる世界なら、まだ親がついていないと生きられないような年齢に見える。
こんな小さな子供が生きる為に食べ物を乞わないと生きていけないなんて…………この世界の過酷さを目の当たりにし、何とかしたい気持ちに駆られた。
でも私が何とかしようと動いたとしても一時しのぎに過ぎない…………それではダメなのよね……こういう子供は、この世界では当たり前にいる、という現実を受け止めなければ。
「ゼフ、交渉してくれて、ありがとう。今日宿泊するのはこの施設だから、ここでこの子の手当をしましょう。」
「……はい」
「……差し出がましいようですが、お嬢様……この子の面倒を…………ずっと見られますか?」
私はマリーの顔をじっと見つめた。マリーが言いたい事は何となく分かるわ。慈善事業で女の子を一時的に手当てして、食べ物を恵んであげてもその場しのぎにしかならない、と言いたいのよね。でもだからってこのまま放って、この子がその後亡くなってしまったら…………きっと私は私でいられなくなる気がする。