【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
 

 「おや…………今日もいらしていたのですね。いつも早朝の大聖堂に御一人で、静かに佇んでいる姿を遠くから拝見しておりました」

 
 「覗き見とは趣味が悪いな。そなたは……」

 「申し遅れました、私の名はフェオドラード。この聖ジェノヴァ教会の大司教にございます、以後お見知りおきを……王妃殿下」


 天から舞い降りてきたかのような美しい男で、床に着きそうな長い髪をたるませながら後ろで束ね、まつ毛まで透き通って見えるほど神々しい男だった。正直大司教ともなれば、もう少し年を取っているのかと思っていたのだが…………しかし年齢を聞くと私よりも1回りも年上と聞いて驚く。

 私の事はすでに知っていたというわけだな…………大司教という教会では最高権力者でありながら意外と話しやすくて、フェオドラードと話すのは嫌いではなかった。こうやって話しやすい雰囲気を作り、人々の心の闇を解いていくのだろう。


 だが私には分かっていた、優しそうに見える人間ほど狡猾だったりする事を…………この国に来た時に身を以って分かったのだから。

 私の予想通りに教会ではきな臭い事が行われていた。人身売買や献金の横領、信者を抱え込み、この国の一大勢力になろうとしている事もすぐに分かる。

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