【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 「…………私たちの出来る事は終わったわね。汚れてしまったし、あとは衛兵に任せて帰りましょう」

 「え?あ、え?」
 

 イザベルが私とヴィルを交互に見て、いいのだろうかといった顔をしたのでリチャードにも声をかけた。


 「リチャード!馬はどこ?もう遅くなったから伯爵邸に帰りましょう」

 「あ、ここに!」
 

 私はすぐに馬に跨って、ヴィルの元に向かった。全身汚れた姿だけど仕方ないわよね。失礼のないようになるべく笑顔で……


 「オリビア?」

 「それでは、王太子殿下。ごきげんよう」


 それだけ告げて馬を走らせた。早くこの場を去らないといけないわ。今の自分はとても醜い表情をしているに違いない…………

 聖女の力を目の当たりにした私は、自分がどう頑張っても聖女には勝てないのだという事をヒシヒシと感じてしまった。この世界には私の入り込む隙など最初からなかったのではないかと、そう思えてならない。


 自分が築いてきたものが、彼女の能力によってあっという間に奪われてしまうんだという事実がショックだった。


 そして多分一番ショックだったのは、殿下と聖女が仲良さそうにしている姿を見てしまったから。私はどこかで期待していたのかもしれない、彼はもしかしたらずっと好きでいてくれるのかも、と。
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