【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
そう思いたかったのは、私が彼を好きになっていたからなのね。
自分の気持ちに気付いた時には聖女様と親密になっていたなんて、間抜けだわ。涙が一筋流れたけど、馬上の風によってすぐに流されていった。
馬を必死に駆っていると、気付いたら昼間に遠乗りに来たリュージュの丘に着いていた。
ちょうどいい、一人になりたかったからここで一休みしよう。後ろから馬の蹄の音が聞こえてきたので、アングレア兄妹だと思った私は馬から降りて、背中を向けたまま声をかける。
「イザベル、リチャード、私はここで少し休んでいくわ。先に帰って……」
「…………それは出来ない」
後ろから聞こえてきた声は、今一番聞きたいようで聞きたくない声だった。ゆっくりと振り返ると、やっぱりそこに立っていたのはヴィルヘルム王太子殿下その人。
ああ、やっぱり会いたくなかった。
さっき自分の気持ちを認めたばかりなのに、目の前にいられると、再確認してしまうじゃない。
「なぜ殿下がここに…………」
「………………………………」