【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】
苦虫を嚙み潰したような表情で近づいてきて私の髪をひと掬いし、キスをしている。その目は私というより空を見つめている感じだった。
「な、何…………」
「……………………なぜ……」
「?」
「……なぜ私は殿下で、リチャードはリチャードなのだ」
……………………え?どういう事?
「?仰る意味が分からないのですけど………………」
「その喋り方も、なぜそんなに他人行儀なんだ……一カ月半も会いに行けなかったから、私との距離も空いてしまったというのか?」
物凄い勢いでいじけている人がいる…………この国の王太子殿下が……
「リチャードの事もいつの間に名前で呼び捨てるようになっていたんだ…………私以外の男を呼び捨てだなんて……」
「リチャードは毎日顔を合わせているし、家族みたいな感じになったから。あなただって聖女様にヴィルって呼ばれていたじゃない」
「あれは向こうが勝手に呼んでいるだけだ……私は聖女に様をつけて敬称で呼んでいるし、名前で呼んだ事はない」
「むむむ…………」