【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
私たちはしばらく睨み合い状態が続いた。名前呼びを許している時点で、同じなんじゃないの?………………でも、なんだか言いたい事を言って、ちょっとスッキリしたかも?
久しぶりに会ってけんか腰っていうのもバカくさくなって、いじけているヴィルの顔を見て笑ってしまう。
「ふっ…………私たち、久しぶりに会って何の話をしているのかしら。バカみたいだからこの話は終わり」
「……オリビア」
ヴィルは長い腕を伸ばしてきて、私をすっぽりと抱きすくめた。その力がとても強くて全く身動き出来ない。でも前と違うのは、私の全身が喜んでいる事。
悔しいからまだ伝えてあげないけど。
「はぁ…………会いたかった……」
そう呟いたヴィルの声が切実で、さらにぎゅうっと腕に力が入る。
「オリビアにはいつもそのままでいてほしいって言ってきたけど、やっぱり止める。私を好きになってほしいから、もっと努力するよ」
「え…………努力って?」
彼の腕が少し緩んだので私が顔を上げて聞くと、意地悪な笑みを浮かべた瞬間、唇を奪われたのだった。
この世界に来て初めてのキスの相手は王太子殿下――――それは予感していたような、願望があったような、不思議な感覚。