【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
顔はヴィルが拭いてくれたので幾らかは綺麗になっているけど、体はすっかり汚れているし正直何もなかったとは言えない状態だった。私は覚悟を決めて我が家に帰る事にしたのだった。
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「オリビア?!その恰好はどうしたんだい?」
公爵邸に帰るなり、お父様に見つかってしまった…………こっそり入ってマリーに綺麗にしてもらおうと思っていたのに。見られたからには言い訳は出来ないわね。
そう思ってお父様に理由を話そうと思ったら、ヴィルがさりげなく助け舟を出してくれる。
「今日街に出かけた時に小火があって、煙をかぶってしまったんだ。聖女が来たので小火は問題なく収まったんだが、煤で汚れてしまったのだ」
「そうでしたか…………消火しようと飛び込んでいったのかと思ったよ。それなら良かった」
お父様はそう言って笑顔になったけど、その言葉にドキッとしてしまった。本当の事を言っていたらまた大騒ぎで、謹慎になっていたかもしれないわね……ヴィルにありがとうと目線で合図する。
彼も分かっていたのか、私の顔を見て頷いてくれた。
こういうやり取りが久しぶりで、本当にホッとしている自分がいる。聖女の存在はまだ私を少し不安にさせるけど、自分の気持ちとヴィルの気持ちが分かって憑き物が落ちたような気分。