【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
煤と煙で肌や衣服には黒い汚れが沢山ついているのに、どうしてこんなにも彼女は美しいのだろうか。一瞬見惚れてしまう。
結局その小火はオリビア達や民や聖女の力も使って、皆で消火出来たのだった。
聖女もあまり近くで力を使っているところを見ていなかったが、教会で力の使い方を学んでいたからかしっかりと火消しを出来た事は評価出来るな。
「さすがだな」
「もう!ヴィルが引き止めていなかったら、もっと早く着いていたのに……」
褒めたのに文句を言われるとは不本意だったが、街の被害が最小限に済んだので感謝はしておかねばならない。しかし次の瞬間、何もかも吹っ飛ぶようなオリビアの声が聞こえてくる。
「リチャード!馬はどこ?もう遅くなったから伯爵邸に帰りましょう」
「あ、ここに!」
リチャード?いつの間に名前を呼び捨てるほどそんなにリチャードと距離が縮まっていたのか…………リチャードもオリビアに仕えているようではないか。
2人の距離がこんなに近づいている事に私が驚いて固まっていると、馬に跨ったオリビアが近づいてくる。
「それでは、王太子殿下。ごきげんよう」
そう言って馬を駆って去って行ってしまったのだった。