【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
手が後ろで拘束されているのでイザベルに後ろを向くような形で、ナイフを手探りで探した。ドレスのモチーフなのかナイフなのか分からないわね……これかな?
ナイフの柄のような部分を見つけて引き抜くと、刃の部分がキラリと光ったのだった。
「これで合ってる?」
「それです!ありがとうございます。手の拘束を解きたいので、私の手に乗せてください」
「分かったわ」
イザベルの手にそのナイフを乗せようとした時、遠くからカツン、カツンと足音が聞こえてきた。誰かがこの部屋にやってくる――――――素早くイザベルの手に乗せると入口の方に向き直った。
ゆっくりと扉が開かれて入ってきたのは、火を点したキャンドルスタンドを持った小柄で頭の毛が薄くなっている中年の男性と、その後ろにはレジーナ嬢がいる。
この2人がボゾン家の人間って事かしら。
2人は自身の持っているキャンドルスタンドで、この部屋の壁かけキャンドルスタンドに火を点け始めた。それでもまだ薄暗い……そして、こちらに振り返るとゆっくりと近づいてきて、私とイザベルの前で立ち止まった。
「お初にお目にかかります、かな?オリビア・クラレンス公爵令嬢……あなたのお父上とは顔見知りだが、あなたと言葉を交わしたのは初めてになりますな。イザベル嬢とは以前お会いした事がありますな。お久しぶりとでも言っておきましょうかな。ほっほっ」
人を拘束しておいて悠長に話している姿に激しい嫌悪感を覚えるわね。まるで何も悪いと思っていないかのような……