【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
最終的には全て犯人が公爵令嬢だと発覚して彼女は処刑、一族も取り潰しになり聖女と王子様はようやく一緒になれた、というハッピーエンドで終わる物語。
その小説に出てくる王子様の婚約者が、公爵令嬢であるオリビア・クラレンス。クラレンス家の一人娘で母親が早くに亡くなってしまったから、公爵はこれでもかっていうくらいオリビアを甘やかしたが為にとっても粘着質な性格に育ってしまって……すっかり悪役令嬢になってしまうのよね。
あんな最期になってしまったけど、私はオリビアの人間臭さが好きだった。彼女は王太子の事が本当に好きで初恋だったはず……王太子妃候補に選ばれ、ずっと一途に想い続けて王太子妃教育も頑張っていたのに……ポッと出の聖女に立場を奪われてしまうだなんて。
世の中不公平だわ。能力がある人間にはどう頑張っても勝てないっていうのが…………読んでいてオリビアが可哀想で仕方なくて。彼女が幸せになるルートをあれこれ妄想した事もあったな。
それにしても、オリビアってこんなに美少女だったのね……そりゃ我が儘になるわ、と納得するほどの美少女だった。こんなに美しくてお金持ちなら、何でも手に入ってしまいそう。
そんな事を思いながら鏡の中の自分をまじまじと見ていると、心配した女性が声をかけてきた。
「お嬢様、まだ頭がボーっとしますか?ひとまずベッドに戻りましょう。それから公爵閣下とお医者様をお呼びいたしますね!」
そう言って私を支えてベッドまで連れて行ってくれた後、ペコリと頭を下げて扉を出ていった女性は、おそらくオリビア付きの侍女のマリーベルだろう。
小説ではマリーと愛称で呼ぶほど二人は仲が良かった。というのもマリーベルはオリビアの乳母の子供で、オリビアより2歳年上であり、母が早くに亡くなったオリビアにとっては乳母のメンデルが母親代わりであったのもあってか、二人は幼い頃から一緒に育った姉妹のような関係でもあった。
マリーベルがオリビア付きの侍女になったのもそれが最適であると父親である公爵が判断し、オリビアもマリーベルの言う事なら従ったからだ。それほど仲が良い関係だったので、オリビアがおかしくなり処刑された後、マリーベルはオリビアの後を追って命を絶ってしまった。
私にはそれが本当に悲しくて辛いお話だったのよね…………この世界のマリーベルも変わらず優しくて、オリビア思いの良い子……絶対に小説のような最後にしてはいけない、そう固く心に誓った。