【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 ヴィルは満足そうに私の手の甲にキスを落とし、馬車へと誘ってくれた。

 今日のドレスも全部彼が揃えてくれたもので、ハイウェストのエンパイアラインのスカートに袖口は流れるように大きいベルスリーブで、どこかの国の王女様のようなドレスだった。

 布地は白に近いベージュからピンクラベンダーへのグラデーションが綺麗で、宝石にはブラックダイヤモンドがアクセントに使われている。


 プロムの会場に着いて、入場する為に入り口で待っている間、廊下では私たち2人だけだったのでドレスのお礼を伝えてみる。


 「今回も素敵なドレスをありがとう。とてもエレガントなデザインで素敵だわ」

 「プリンセスのようなデザインだろう?君は私のプリンセスだから……」

 「もう!すぐそういう事を……」


 意地悪な表情でからかってくるので、いつものように返すと、ははっと大きな口を開けて笑うヴィルを見ながら、今夜くらいは素直に自分の気持ちを言ってもいいかなと思った。


 「あなたもとても素敵よ。まさに王子様ね」

 「惚れ直した?」


 それはいつぞやの質問――――司教達を捕まえて、港から荷馬車に乗って領地に戻る際に交わした言葉。あの時は全然好きになれなくて同意する事はなかったけど――――


 「…………そうね、惚れ直したわ」

 
 私がそう告げると、ヴィルは驚いてこちらを凝視している。凄い視線を感じるわ……顔が熱い。
 
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