【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】
ドタバタな出港
「え……イザベル?!どうしてイザベルがここに?」
閉じかけた扉をもう一度開き、驚いて問いかけると、私とイザベルの間に立っていた黒髪の男性が、呆れたような口調で話し始めた。
「お嬢さん達、お知り合いかい……ここはご令嬢の遊び場じゃないんだ。これから王太子殿下がいらっしゃるというのに、さっさと船を下りてくれないか」
「無礼な。目の前のお方こそ、王太子殿下の婚約者であらせられるオリビア様だと知らないのか?」
「なっ!これは失礼をいたしました!」
黒髪の男性は深々と頭を下げてきて、私に謝罪をし始めた。
特に無礼だとも何とも思っていないのだけれど、あんまり深々と頭を下げるので私の方が申し訳ない気持ちになってしまう。
「まぁ、そんなに頭を下げなくても。むしろ業務の邪魔をしてしまったのではと思っていたわ。ごめんなさいね」
「いえ!勿体ないお言葉……」
「ところで、どうしてここにイザベルが?」
私は疑問に思っていた事を率直に聞いてみる事にした。
しかし私の問いに答えたのはイザベルではなく、黒髪の男性の方だったのだ。
「オリビア様、このお嬢さんはご自分が操舵手になると言い出しまして、我々としても困っていたところなのです。オリビア様から何とか説得してください!」
私は目の前の男性の訴えに目を丸くしてしまう……操舵手って、イザベルが出来るの?
確かにイザベルは騎士の家系だし肉体派だから、色々な事が貴族のご令嬢とは違うけれど。