【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
お父様とマリーが大喜びしている姿を見て、これで良かったのかもしれないと思えた。ふと病死する寸前の子供たちの姿を思い出して胸が痛くなっていたけど、私の無事をこんな風に喜んでくれる人がいる。それがこんなにも嬉しいなんて……。
そうして喜びに浸っていた為、お父様が「王太子殿下にお知らせしなければ……」と言って出て行った事に私は気付いていなかった。
王宮医のメローニ医師も「やれやれ……」と安心して去っていくと、部屋には私とマリーの二人きりになった。
「マリーにも心配かけたわね……看病してくれてありがとう」
そう言葉をかけると感激したように目を潤ませたマリーは、自分の涙を拭いながら、熱で浮かされていた時の事を語り出した。
「お嬢様がなかなま目覚められないので、王太子殿下が心配してお顔を見にいらして下さったのですよ。心配そうに手を握られて…………お元気になられましたら、お礼のお手紙でも差し上げたらお喜びになると思います!」
そう言ってニコニコしているマリーの言葉を聞いて、頭を鈍器で殴られたような気がした。
私はまだ王太子と婚約中なのだ。今は何歳かは分からないが、将来的には王太子が聖女の方を選び、私は王太子妃から脱落する…………王太子の中にオリビアに対する恋愛感情などなかったはず、なのに手を握って心配していたですって?
病死する前の夫との夫婦関係が冷え切っていた事もあり、すっかり私は男性不信に陥っていた。王太子のその行動を聞いただけで寒気がしてしまう!
どの道婚約破棄される運命なのだから、今の内に早めに破棄してくれないかしら…………ニコニコするマリーを横目に王太子と破局する方法を悶々と考えていたのだった。