【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
ゼフSide
俺には物心ついた時から親はいない。自分が何者かも分からず、その辺に打ち捨てられている物乞いだった。
皆が付けてくれたゼファーという名前はそのうち呼びやすいゼフに変わっていき、かろうじて自分がいる場所は王都の外れなのだという事は少し成長した時に理解したが、毎日生きるのに必死で、特に食べる物を手に入れる為には何だってした。
言葉を覚えるのには苦労したが、運動神経だけは良かった為、追いかけられても捕まる事はなかったし、刃物を持っても負ける事はなかった。
そんな自信が過信に変わり、8歳になる頃に大きなヘマをする。
いつものように食べ物に困っている仲間たちの為に盗みをしようと、大きめの倉庫に潜り込んだ…………金目の物も沢山あったし食料も沢山置いてあったから、どこぞの貴族に持って行かれる物だろうなと思った俺は、少しくらい食料が減っていても分からないだろうと高を括っていた。
貴族なんていくらでも旨いものを食べられる、いくらでも着飾れる、最高のベッドで寝て、集まってお茶を飲んでいるだけの阿呆だと思っていたのだ。
(減っても気付かないだろ…………)
「おい、食べ物をちょっと多めに持っていこう。宝石はダメだぞ」