【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
「さっき逃げて行ったのは、お前の仲間か?…………あの感じではいつか捕まってしまうだろうな。お前もさっさと逃げればよかったものを」
俺は少年を力の限り睨んだ。貴族にとっては取るに足らない人間だろうが、俺たち物乞いにだってプライドはある。共に明日をも知れぬ日々を一緒に生きてきたのだ…………簡単に裏切れるものではない。
「………………ふん。威勢だけはいいようだな。おおかた裏切れなかっただけだろう」
驚いた、俺よりも小さく見える少年だが、とても賢い事は分かる。
「お前、面白いな。今日から私の話し相手になれ。」
「なっ…………でき……な……い………………」
必死に絞り出すと「お前の了承など必要ない。私がお前を必要だと言うんだから来るんだ」と強引に連れて行く気満々だった。役人たちは猛反対したが、少年が頑として受け付けずに俺を運ばせた。
そこからはドタバタだった…………連れて行かれた先は王宮で、少年はこの国の王子だったのだ。俺はすぐに手当てされ、身なりを整えられて王子殿下のそば仕えとして本当に話し相手になった。そして運動能力を買われ、王宮騎士によって鍛えられた……めきめきと頭角を現し、王子殿下の話し相手から専属の護衛になっていった。