【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 あの時殿下は、ちょうど王都にお忍びで遊びに来ていたところ、騒ぎを聞きつけて飛び込んできたというわけだ。あんな王都の外れにお忍びで遊びに来ているとは、どんな王子様なのかと思ったが……一緒にいる時間が増えると、殿下がこの国についてとても勉強していて、大切に思っている事が伝わってくる。
 俺たちのような人間を少しでも減らしたいと、あんな外れにまで来て、見回っていたのだ。

 あの時の殿下はわずか7歳、自分は8歳だったのでその年齢からここまでの志を持っている事に驚くばかりだった。
 

 理想で食っていけたら苦労はしないが……貴族や王族なんて何も考えていない連中だと思っていたのに、殿下なら理想を現実に出来そうな気がしてくる。
 
 
 暴行され、意識が遠のきそうだったあの時、殿下が俺を……俺自身を必要だと言ってくれた事が、俺の生きる意味になった。


 そんな殿下にも婚約者が出来、俺はその護衛を頼まれる事になる。普段は日陰者だが、今回の任務はその婚約者であるオリビア様を側で守らなければならない。いつも殿下の近くにいる令嬢の事は知ってはいたが、一緒に行動していると、やはりこの者も殿下に近いものを感じた。

 
 俺を救った殿下と同じようにオリビア様も幼い物乞いの女の子を助け始める…………いつぞやの再現を見ているかのようだなと思った。

 そして領地に連れて行くと言うのだ。その時のオリビア様の目は、あの時の殿下の目と同じだった。
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