目と目を合わせてからはじめましょう
 気付いた時には、カーテンの隙間から朝の日差しが漏れていた。

 うん?

 体を動かそうと思うが、何故か動かない。しっかりと何かにホールドされている。お腹と胸、足までも。しかも、肌に直接に触れている感覚。これが雨宮の手と足だと、昨夜の事を思い出すまでにしばらく時間がかった。

 「起きたのか?」

 頭の後ろから、少々低い声が聞こえる。

 「あっ。は、はい」

 急に恥ずかしくなって、体を小さく丸めた。と言っても、雨宮の手と足が邪魔して、気持ちだけ小さく丸まった。


 「何時から仕事だ?」

 「8時半までに、お店に行きます」

 「じゃあ、もう少しだけいいな」

 雨宮は、もう一度私の体を抱きしめ直すと、目を閉じてしまったようだ。

 いやいや、このまま寝るって、どういう事?

 こういう流れって初めてで、どしていいかわからないよ〜〜
 とにかく、雨宮の手の位置が悪い、触れられていると思うだけで、変な気分になってくる。とても眠ることなんて出来ない。この手から抜け出そうとモゾモゾと動き出した。

 「どうした?」

 眠そうな声が耳元で響き、悲鳴を上げそうになる。

 「出来れば、シャワーをお借りしたいなと。出勤の準備もありますし……」

 「そうか」

 雨宮の腕が緩んだ瞬間に、スルッとベッドから抜け出した。

 やばい!
 素っ裸だよ。

 ああー 脱ぎ散らかしたブラウスは、入り口の扉の前だ。なんで、あんな遠くに私のパンツ。
 ダッシュで、ブラウスを拾いに向かった。


 なんだか嫌な予感がして、ベッドへ目を向ける。バッチリ雨宮と目が合った。

 寝てるんじゃなかったの?

 「変態!」

 ギロっと雨宮を睨んだ。ブラウスじゃ隠しきれない裸のまま、寝室を飛び出した。
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