目と目を合わせてからはじめましょう
 「どうした!」

 「どうしようーー。ママ達があいさつに来るって」

 「えっ? どうして? あいさつ? ていうか、どうするこの部屋?」

 ベッドの上で、裸のまま私達は固まった。

 「やばいーー。片付けろ!」

 「無理よ、今からなんて」

 「取り敢えず、何か着ろ」

 「そうですね」

 私達は、ベッドから飛び降り、それぞれ下着を身につけた。


 「どうして断らなかった」

 「言いましたよ。人の話聞くような人達じゃないんですよ」

 「そんな…… だから、俺から挨拶に行くって言ったじゃないか」

 「ああー。どうしよう。これじゃ座る所もない!」

 ソファーの上にある洗濯物を抱えた。


 「とりあえず寝室に入れるか?」

 「そうね、流石に寝室までは見ないでしょ。全部、寝室に入れてしまいしょう」

 二人で、せっせと片付けられていない、本や小物など全て寝室に運んだ。

 「あら、意外に綺麗になったんじゃない?」

 「そうだな。取り敢えず座るところは確保できたな。キッチンどうする?」

 カウンターキッチンだが、ソファーに座ってもらえは、それほど奥までは見えないだろう。

 「カウンターの上と、見えるところだけ片付ければ大丈夫ですよ」

 「そうだな」

 雨宮がカウンターの上に置いたままの、郵便物やコーヒー豆、詰め替えようの洗剤までも抱えて寝室に向かった。
 まあ、いいか。取り敢えず隠せば。


 ピンポーン

 ああー、来ちゃったよーー

 「はい」

 雨宮がインタホーンの前に立った。


 片付ける事で頭がいっぱいになっていたが、よく考えれば、同棲中の彼の家に親が来るって事だよね? それって、どういう状況?

 「市川です。急にごめんなさいね」

 間違いなくママの声だ。


 「少しお待ちください」

 玄関に向かう雨宮の後ろに続いた。
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