目と目を合わせてからはじめましょう
 「買ってきた食材、冷蔵庫に入れるわね」

 ママは、キッチンに向かって歩き出した。

 「いいよ。ママ、私が、入れるから座ってて」

 ママは、正座したままの雨宮と私の方を見て、ニヤっと笑った。

 「ママの目をごまかせると思うの?」

 「えっ? 何のことよ」

 ママは、荷物を持つとキッチンへ入ってしまった。


 「やっぱりね。料理はほとんどしていないわね」

 ママの手が冷蔵庫を開けた。

 しまったぁ


 「お義父さん、お待ちください」

 雨宮の声に振り向くと、パパが寝室のドアに手をかけていた。

 「パパ! 何しているのよ?」

 「何って? トイレ借りようと思ってな?」

 「トイレは、そこじゃないよ!」

 「じゃあ、ここは何だ?」

 パパが、寝室のドアを開けてしまった。

 ああ、なんてこと!

 「やっぱりな。思った通りだ」

 「パパ。寝室を開けるなんて、失礼よ」

 「これが寝室か? 一体どこで寝るんだ? これを機会に、生活環境を改めた方が良さそうだな」

 「うっ……」

 言葉が出ない。


 「パパ、始めましょうか? 私は作り置きのおかず作っておくから、まずはパパに片付けの仕方を教わりなさい。パパに頼ってばかりいるから、こういう事になったのよ」

 ヒェー 今、それ言う?


 「さあ、この物達を、居るべき場所に戻してあげなさい。コーヒー豆は、寝室には居ないだろ?」

 パパが、呆れたような顔でコヒー豆を雨宮に手渡した。

 「はい」

 雨宮は、コーヒー豆を抱え台所に向かい、カウンターの横の棚にしまう。

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