目と目を合わせてからはじめましょう
 パパの指示に、次々と物が片付けられていく。

 「手にした物は、その場に置かず、定位置へ戻しなさい」

 それが出来ればこんな事にはなっていません。

 洗濯物も、雨宮と並んで畳み方を伝授される。ハンガーにかけて干したものは、そのままクローゼットに入れるなど、ちょっとした手間で出来る事も指示をされる。

 パパの魔法にかかり、あっという間に寝室に押し込められた物たちが片付いて行った。


 「お風呂とトイレは綺麗に掃除してあるな」

 「はい」

 雨宮と揃って返事をした。


 「洗濯機の中も溜まってはいないな」

 「はい」

 雨宮と揃って返事をした。


 「ゴミもちゃんと捨ててあるわ」

 「はい」

 雨宮と揃って返事をした。


 「どちらがやっているの?」

 「私達、同じことができて、同じ事が出来ないみたいなの」

 「へっ? じゃあ、お料理は?」

 雨宮と私は揃って首を横に振った。


 「思ったより大変かもしれないわね。私達の方が、まだマシだったかしら。パパ?」

 ママが、パパの方をチラリと見た。

 「まあな、ママは料理と洗濯物は干せたけど、片付けは全くだったからなあ」

 「パパは、片付けしか出来なかったじゃない」

 「何だか、懐かしいなあ、あの頃が」

 「本当ね」

 パパは、ママの肩何んか抱いちゃって思い出に浸っている。

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