目と目を合わせてからはじめましょう
 「ちょっと、人の家で、イチャイチャしないでくれる」

 「あら、いいじゃない。あなた達もイチャイチャすれば?」

 「そういいう問題じゃないでしょ」

 「まあ、こんな状態じゃ、定期的に家事を教えに来た方が良さそうなだな」

 「ええー。やめてよ!」

 冗談じゃない。

 「バカねえ。家事は大事よ。始めは、多少散らかっていたり、出来合いの食事でもいいかもしれないけど、長く一緒にると、そんな生活の些細な事が大きな喧嘩になったりするものよ」

 「そういう事もあるかもしれないけど、二人で何とかやっていくわよ」

 「よく言うわね。毎週、パパが片付けに咲夜の家に行ってた事ぐらい分かっているんだから」

 「うっ……」

 何も言えなくなってしまう。


 「お義父さん、お義毋さん、僕達に家事を教えてください」

 なんと、雨宮が頭を下げた。

 でも、私だって分かっている。このままじゃいけない事。雨宮とずっと一緒にいたいと思うから、生活の事は見直さなければいけない。

 もしかしたら、雨宮も同じ気持ちで言ったのかもしれない。雨宮の方を見ると、私を見て無表情な顔が少し緩み頷いた。

 「お願いします」

 私も頭を下げた。


 「それじゃあ、昼食にしましょうか。新鮮なお魚が手に入ったから、煮付けてみたの。若い方はあまり食べないかしらね」

 ママはチラリと雨宮を見る

 「いえ。魚は好きです」

 「そうよね。お仕事柄、きちんとした食事も必要よ」

 そうだよね。雨宮のためにも、もう少し整った食事を作れるようにになりたい。始めて、そんな事を思った。

 相変わらずママの作ったご飯は美味しくて、自然と笑みが漏れた。
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