目と目を合わせてからはじめましょう
 「さあ、食べよう。お義母さんが差し入れしてくれたみたいだしな」

 「そうね」

 咲夜がカウンターの上の袋を開いた。

 「何だか、こうなるの分かってたみたい」

 咲夜が手にしているは、インスタントと言ってもかんてんなど具沢山のスープ。タッパーの中にポテトサラダが入っていた。その他、日持ちのしそうな副菜がいくつか入っているようだ。だが、メインの物はなく、咲夜が作る事を分かっていたんじゃないかと思う。

 
 「器を持ってくるから、スープを用意して食べよう。腹へった」

 「うん」

 俺の持ってきた器に、彼女がインスタントのスープにお湯を注ぐ。

 席に着くと、二人で手を合わせた。
 
 「いただきます」


 おおっ?

 「美味いよ」

 見た目はともかく、咲夜の作ったハンバーグはなかなか美味かった。

 「そんな無理しなくていいよ」

 そう言いながら、咲夜もハンバーグを口に入れた。

 「あっ。本当だ。不味くない」

 「いや、美味いよ」


 たわいもない事で、笑いながら食事を済ませた。


 だけど、大変なのはここからだった。

 キッチンの中は、汚れ物が溢れている。使った調味料も出したままだ。

 「料理って大変なのね」

 「そうみたいだな」


 そして、俺の畳んだというか、丸まった洗濯物等も行き場を失っている。正直言って、部屋の中がぐちゃぐちゃしていた。


 その後、彼女はキッチンの片付け、俺は、部屋の片付けを始めたが、お互いたいして進まないうちに疲れてしまった。

 「明日は休みだし、明日でいいんじゃない?」

 彼女が、床に座り込んで言った。

 正直、彼女の言葉が有難い。


 「そうだな。明日にしょう。風呂入れてくるよ」

 「ありがとう」


 疲れたと言っても、二人でゆっくり過ごせる夜は貴重だ。風呂から上がった彼女の腰に手を伸ばしたのは言うまでもない。
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