目と目を合わせてからはじめましょう
 翌日の休みも部屋の片付けをしようと、それぞれに始めたのだが、たいして進まなかった。

 そんな日が続き、彼女もよく頑張ってくれているのに、うまく家事が回っていかない。彼女は泣き言や、落ち込むような素振りは見せないが、かなり無理をしているのがわかる。苦手な事を一生懸命やっているのだから。

 俺も、部屋の片付けなど試みているが、一箇所片付けても、また別のところが散らかる事態だ。仕事では、全体を把握し、皆に指示する立場であるのに、こんな狭い家の中で、うまく回していけないことがもどかしいし、彼女に申し訳ないと思う。

 シフトの関係で、少し早めに帰宅すると、彼女がキッチンでガタゴトとやっている。俺が帰ってきた事にも気づかず、料理に集中しているようだ。

 「ただいま」

 「おかえり。もう、なんでうまく切れないのよ。ああ、醤油はどこよ?」

 俺は、棚の中に見えた醤油を手に取り、彼女に渡した。

 「ありがとう」


 「今夜の晩飯はなんだ?」

 「三食丼と、シャケを焼いて、お味噌汁の予定」

 「そうか」


 俺は、まだ流しの中にあるほうれん草を手にした。

 「これ、どうするんだ」

 「茹でるの」

 目につくところにあった鍋に水をいれ、IHにかけた。ほうれん草を洗って、沸騰した鍋に入れる。

 「どのくらい茹でるんだ?」

 「タブレットのレシピを見て?」

 タブレットをスライドすると、さっと三十秒と書いてある。

 「ああー 茹ですぎた」

 慌てて、ザルを探して流し台に置き、鍋に入ったほうれん草を流し入れた。

 タブレットのレシピに、冷水に晒すと書いてある。とりあえず、水をかけた。レシピを見ながら、ほうれん草を絞って、まな板に乗せた。レシピの写真のように、切ってみる。

 キッチンの台の上には、シャケがパックに入ったまま置かれている。

 「シャケどうするんだ?」

 「焼くの」

 「まあ、そうだろうな」

 ポケットからスマホを出し、魚の焼き方を検索する。アルミホイルを敷くらしい。
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