目と目を合わせてからはじめましょう
 彼女は、なんとか肉そぼろが出来上がったらしく、味噌汁の準備に入った。棚から鍋を出そうとする彼女に、流し台に入っている鍋を持ち上げた。

 「これでいいんじやないか?」

 「そうね」

 俺は、スポンジに洗剤をつけ、鍋を洗った。ついでに、ボールやザルも洗う。

 「醤油、片付けていいか?」

 「うん。お砂糖と、みりんもお願い」

 「ああ」

 俺は、調味料を片付ける。ついでに、ケースに残った卵も冷蔵庫に終う。


 ピピーとIHのヒーターの音が響いた。シャケが焼けたようだ。食器棚から平な皿を出し、焼き上がったシャケを乗せる。なかなか、いいんじゃないか?

 「できた!」

 味噌汁が出来上がったようだ。

 俺は、丼を出し炊き上がっていたご飯を盛り付けた。彼女が盛り付けた味噌汁をテーブルに置き、箸を並べている間に、彼女が三食丼を盛り付けた。

 「出来た! あれ? いつもよりキッチンがスッキリしている」

 「そうか?」

 「うん。ありがとう」

 彼女がニコリと笑う。可愛いな。彼女が笑顔でいてくれたらそれでいい。


 二人でテーブルを囲んで、なんとか仕上がった食事を目の前にした。

 「いただきます」

 二人で手を合わせた。

 「今日は、味噌汁まで作れた。一人じゃなかなか何品も作れないな」

 「たまたま、俺は早く帰ってきただけで、皿を出したくらいだ。大変なところは全部咲夜がやってくれたじゃないか」

 「そんなことないよ。頑張ってるんだけど、いつもキッチンがいっぱいになったまま……」

 咲夜は首を横に振って、小さくため息を付く。

 俺は、まだ熱い味噌汁を啜った。

 「美味いよ」
 
 本当に美味しいと思う。誰かの作った食事を味わう事さえ忘れていた日々だったのと、今になって気づく。


 咲夜も味噌汁を啜った。

 「本当だ。美味しい」
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