目と目を合わせてからはじめましょう
 「なあ、咲夜、食事の支度は大変だろ? 時間のある時に作ってくれればいいよ。惣菜や弁当だっいいんだぞ。俺は、咲夜が無理して体調崩す事の方が心配だ」

 「大丈夫だよ。それに、来月から大きな仕事があるんでしょ? 体調管理も大事だし、私が料理したくてやっているの。始めて、誰かのために何かしたいって思うの。どちらかと言うと、やってもらう事の方が多かったから」

 彼女は、俺の方を見てふっと笑った。

 ヤバい。可愛すぎる。

 「美味いよ。腕上げてきたじゃないか?」

 「ありがとう。雨宮さんが大きな仕事の間は。私も料理サボるから、心配しないで」

 うっ……
 熟年夫婦のような言葉はやめてもらいたい。俺が、居ない間が楽しみと言っているように聞こえてきた。

 「そんなに長い期間じゃないからな」

 少し、不貞腐れたようないいかたなってしまい、自分でも大人気ないと思ったが、

 「そうなの。良かった。長くなるのなら寂しいから、家に戻ろうかと思ってたのよ」

 寂しい? その言葉で、俺の気持ちは一気に軽くなる。単純だと自分でも呆れる。


 だけど……

 「俺が、すぐに助けられないような時に、家には絶対に戻るな。俺の留守中は、他の奴がすぐに対応できるようにしてある。警備にも巡回してもらうように頼んであるから心配するな」

 「ええー。そこまでしなくても。家には帰らないようにするから」

 彼女は不服そうに、眉を顰めた。

 「用心に越したことはない」

 「そうかもしれないけど、襲われる人って、もっと美人で色気のある人じゃないの?」

 彼女は、一体何を言っているんだ? 襲われて怖い思いをしたことを忘れてしまったのだろうか?

 それに、彼女は美人だし、色気だってある。沖縄でのことを思い出し、またもや不安が過ぎる。

 「なるべく遅くならないように帰れよ。遅くなるならタクシーを使うんだぞ。俺が居ないんだから、いつもり警戒しろよ」

 「はーい」

 彼女はごちそうさまと、手を合わせた。全く、心配でならん
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