目と目を合わせてからはじめましょう
 彼女の呆れたような白い目が向けられた。

 「なあ咲夜、家事は一緒にやった方が、段取りよく行く気がしないか? 料理も洗濯も、二人でやったら、なんとかなったんじゃないか?」

 俺は、綺麗に片付いたキッチンと、畳み終えた洗濯物を交互に見た。

 「そうね」

 彼女も、交互にキッチンと洗濯物を見た後に、大きく頷いた。


 「家事分担決めてやる方が、段取りいい人達もいるかもしれないが、俺達は一つのことを二人でやった方が、上手くやれるんじゃないか?」


 俺と咲夜は似た物同士なのかもしれない。苦手な物が同じで、一人でやろうとすると無理ができるのだろう。ちょっとした手助けをし合うことで、それなりに型になっていくような気がする。他人から見れば、要領が悪いように見えるかもしれないが、俺達のペースでいいんじゃないだろうか。


 「一人でやるより、綺麗に早く出来たのは確かよね」

 「だから、一人でなんでもやろうとするな。なかなか休みが合わないけど、一緒にいるときにやればいいよ。俺達は俺達のやり方を探していこう」

 「うん」

 頷いた彼女の顎に、手を伸ばすとそのまま体を近づけて唇を重ねた。

 こんなに、この家を空けることに、不安を感じた事はない。無事に仕事を終わらせて、一刻も早く戻りたい。腕の中の彼女の温もりが、俺に強くそう思わせた。
< 120 / 171 >

この作品をシェア

pagetop