目と目を合わせてからはじめましょう
 ジムに入ると、同じ職場の人間も何人かいて、言葉を交わしながらトレーンングを始める。インストラクターもおり、メニューの確認を行っていると。

 「太一、こっちよ」

 岸川が、手を振りながら近づいてきた。

 「岸川さん、綺麗だよなー」

 同じ職場の男達が、ほーっとため息ついた。確かに綺麗だと思うが、一緒に仕事しているせいか、あまり意識したことがない。


 トレーニングメニューを終わらせると、岸川とフリールームに行き、犯人に襲われた時の立ち回りを研究しながら、身体を動かした。職場の奴らも一緒にトレーニングに入り、充実した訓練になったと思う。


 プールでクールダウンし、シャワーを浴びると、咲夜の店に行くには少し早い時間だった。

 ロビーでコーヒーを飲もう思って更衣室を出ると、岸川が壁に寄りかかって立っていた。

 「どうした?」

 「時間ある? お茶でもどう?」

 「ちょうど、ロビーでコーヒーでもと思ったとこだ」

 「そ、そう。どこか別の所に行かない?」

 「用事があるから、あまり時間ないんだ」

 「そうなのね…… じゃあ、ロビーでいいわ」



 ガラス張りのロビーのカフェスペースで、セルフサービスのコーヒーを二つ持って席についた。

 「何か話しがるのか?」

 警護の事だと、疑いもしなかった。だが、岸川の口から出たのは、全く別のことだった。

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