目と目を合わせてからはじめましょう
 「昨日、社長が連れてた女性は、お客さんだったの? 警護の依頼ではなさそうな感じだったけど……」

 「咲夜の事か?」

 「咲夜さんんて言うのね」

 なぜ、岸川が咲夜の事を聞いたのかは分からないが、隠す必要もないだろう・

 「ああ。特別な女だ」

 「えっ? 社長の?」

 「まさか。そんなわけないだろ」

 確かに、俺の嫁になったら、親父にとってもある意味特別な存在になるかもしれないが……
 そんな事を考えると、口元が緩んでしまう。

 「太一、今、何考えてた?」

 「えっ?」

 「そんな緩んだ顔の太一、初めて見た」

 「そうか?」

 「社長も、嬉しそうな顔して、彼女を連れて歩いていたわよね」

 「そこまでは知らんよ」

 そう言ったが、久しぶり親父の嬉しそうな顔を見たのは確かだった。


 「いいわね。咲夜さん」

 「何がだ」

 「守りたくなるじゃない。私なんて、戦う事に慣れちゃって……」

 「人それぞれだろ。岸川は岸川にしか出来ない事をやっている。頼れる仲間だ」

 「仲間…… そうね」


 腕時計をチラリと見る。

 「悪い、そろそろ行かないとだ」

 俺は、カバンを持って立ち上がった

 「うん」

 岸川も立ちあがったが、バタンと音がして、そのまま床に座り込んだ。

 「どうした?」

 「眩暈がして……」
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