目と目を合わせてからはじめましょう
 法要が終わると、湯之原家で会食会が行われた。屋敷内外の見回りをするが、至って不審な事はない。

 もちろん聞くつもりなどないのだが、イヤカフの反対の耳から入ってくる家族の会話。

「なあ、じーちゃんなんでSP付いてもらったんだ?」
「それがな…… 先月、大臣と一緒にいた友人が襲われてな。古くからの友人だったのに……」
「ええっー」
「そんなニュースあったか?」
「その友人の容態は?」
「それがな…… 大きな擦り傷でな!」

 多分だが、このじーさんが狙われる事はないだろ……
 大臣の隣にいたじーさんが、美人秘書に見惚れて、段を踏み外した事故のことだろうから。

 交代の時間になり、高木が来た。申し送りをしていると、湯之原氏から声をかけられた。

「おお! そうだ、雨宮君!」


 湯之原の元へ行き、軽く頭を下げる。

「そろそろ、引き継ぎの時間かね? 申し訳ないが、咲夜の家を回ってもらえないだろうか? セキュリテーの確認をして欲しい。君の会社のセキュリティを使っておるから、確認できるだろ?」

「大丈夫よ、じーちゃん。昨日もちゃんとピピーって音してたから」

美人の彼女は、じーさんの孫娘らしい。

だけど、ピピーって何だよ。

「ばか言っちゃいかん、犯人と言うのは、事前に下調べしておるもんだ!」

 そりゃそうだ。

 何か事件があったのだろうか? 本部に確認してみるか。

「はい、承知しました。確認させていただきます」

頼まれたら断るわけにもいかなし、何かあってからでは遅い。

「それなら、雨宮さんもケーキ食べていって頂戴。すぐ用意するわ」

美月さんが、席を立った。

「いえ。私は結構です」

「そんな事言わずに。お母様にも、持っていってもらいたいのよ」

胸の奥が少し痛むのと同時に、ありがたい気持ちも湧く。

「すみません。いただきます」

「まあ、座りなさい」

湯之原に促され席に座ると、向かいに彼女が座っていた。
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