目と目を合わせてからはじめましょう
目と目をあわせて
 〜市川咲夜〜

 「咲夜、来週末は空いているか?」

 「うん。特に用事はないけど」

 テーブルの上に広げた洗濯物を、二人で畳みながら言った。相変わらず、雨宮は私の下着ばかり手にする。

 「一緒に、行ってほしいところがあるんだ」

 「うん」


 「それから、岸川が来月、ロスに行く事になった」

 「えっ? そうなの……」

 岸川とは、病院での一件以来会っていない。岸川さんは素敵な女性だ。きっと、彼女なりのけじめなんだろう。


 「実は……」

 雨宮が言葉を濁す。

 「岸川さん、太一さんの事ずっと好きだったのよね」

 「知ってたのか?」

 「当たり前じゃない。気付かなかったのは太一さんくらいよ」

 「そうか?」

 「それに、私も、しっかり岸川さんに言われたから」

 「何を言われたんだ?」

 「太一さんの事がすごく好きだったみたい。でも、大丈夫よ、私もちゃんと言ったから。それに、岸川さんに言われたことで、太一さんを本当に大事だと実感できたからいいの。私、太一さんの事になると、怖いものなくなるみたいだから」

 「ふーん。まあいいが」

 雨宮の手が伸びてきて、ぎゅっと抱きしめられた。そのまま、自然と唇が重なる。

 ううん? この流れはまずい。逃げ出そうと体を捩るが、雨宮の力に適うはずがない。雨宮の手がスカートをやらしく捲り上げる。

 「ちょっと、お風呂まだだし」

 逃げようとしたが、雨宮の唇が首筋をなぞる。

 「ふぁっ」

 「無理だろ。風呂は後だ」

 ああーーっ
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