目と目を合わせてからはじめましょう
 運ばれてきたケーキをフォークに刺してチゴとスポンジを口に入れた。
げ〜っ。ブランデーの香りがする。このぐらいなら大丈夫だろう。
彼女が、ケーキを口に入れた俺を訝しげに見てる。何か問題でもあるか?

 ブランデーの味を薄めるように、紅茶を流し込んだ。
なんだこりゃ、ブランデー入りかよ。

 その瞬間、彼女の目がわずかだが、笑いを堪えたきがした。何がおかしい? 俺は、冷ややかに彼女をみた。
大体なんで俺が、お前を送らなきゃならんのだ。


 彼女を後部座席に乗せ車は走り出す。とにかく、酔いが回る前に、仕事を終わらせたい。ありがたい事に、運転手の腕がよく、あっという間に彼女の自宅に着いた。うちにスカウトしたいくらいのドライバーテクニックだ。

 一人暮らしにしては、広い家。監視カメラの確認をし、モニターをシステム課に確認する問題はなさそうだ。後は、家の中だ。玄関に入ろうとした瞬間、背後に人気を感じたが、振り向いた時には、気配は消えていた。

「どうかされましたか?」

 彼女を不安にさせてはいけないと思い、冷静に答える。

「いえ。お邪魔します」

家の中へ入らせてもらった。

全て確認し、あと少しのところでフラついたたが、何とか止まった。早く、外へ出なければ。

玄関のドアが目に入った時だ。
ヤバい。
慌てて、階段の手すりに捕まった。

「大丈夫ですか?」…

「大丈夫です。すみません……」

彼女が差し出した白い手が見えた。
それを最後に、俺の記憶は消えてしまった。
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