目と目を合わせてからはじめましょう
彼女も少し落ち着いてきたのだろうか、深呼吸をした後、声のトーンが穏やかになった。
「もう、動かせるようになったので、大丈夫です。それより、どうして倒れたのか、教えていただけますか?」
そりゃそうだよな。一晩、ろくに知りもしない男の下敷きになっていたのだから。話すしかない。
「そうですよね…… 多分、ブランデーかと……」
「ブランデー? もしかして、ケーキに入っていた?」
「はい。それと紅茶にも」
「酔い潰れたってこと?」
そんなにはっきり言うなよ。
「職務上、あまりアルコールは口にしないのですが、ブランデーに特別弱くて、寝てしまうんです。もう少し大丈夫だと思ったのですが、一気に回ってきてしまって」
「だったら、言えばよかったじゃないですか?」
言えるわけないだろ? ケーキに入ったブランデーで酔ったなんて。
「いえ。任務ですから」
「いえ。迷惑です」
彼女ははっきり言った。
そんな話をしていると、お風呂が沸きましたの音楽が流れた。
「事情はわかりました。お帰り下さい」
そうだな。そろそろ帰ったほうがいいだろう。
俺は立ち上がると、モニターフォンの確認を始めた。
「家中の鍵は確認できてます。絶対にモニターを確認してから、玄関を開けて下さい」
「はい。あなたでない事を確認してから、開けます」
あははっ。彼女にしてみれば俺が一番危険だわな。
やっぱ可愛いな。そう思った瞬間、SPでない、雨宮太一が降りてきた。
「本当に、ごめんな」
心からそう思った。
彼女の家を出ると、怪しい人影はないか? もう一度家の周りを確認した。
体を動かしたい気分で、いつも行くジムに向かった。
いくら激しく体を動かしても、頬に残る柔らかい感覚が消えない。目の前には。黒いレースがなん度も通り過ぎていく。
もうダメだ……
やはり気になって、俺は彼女の家まで戻ってきた。
彼女が家にいる事を確認し、部屋の電気が消えるまで、車の窓からじっと見守った。
「もう、動かせるようになったので、大丈夫です。それより、どうして倒れたのか、教えていただけますか?」
そりゃそうだよな。一晩、ろくに知りもしない男の下敷きになっていたのだから。話すしかない。
「そうですよね…… 多分、ブランデーかと……」
「ブランデー? もしかして、ケーキに入っていた?」
「はい。それと紅茶にも」
「酔い潰れたってこと?」
そんなにはっきり言うなよ。
「職務上、あまりアルコールは口にしないのですが、ブランデーに特別弱くて、寝てしまうんです。もう少し大丈夫だと思ったのですが、一気に回ってきてしまって」
「だったら、言えばよかったじゃないですか?」
言えるわけないだろ? ケーキに入ったブランデーで酔ったなんて。
「いえ。任務ですから」
「いえ。迷惑です」
彼女ははっきり言った。
そんな話をしていると、お風呂が沸きましたの音楽が流れた。
「事情はわかりました。お帰り下さい」
そうだな。そろそろ帰ったほうがいいだろう。
俺は立ち上がると、モニターフォンの確認を始めた。
「家中の鍵は確認できてます。絶対にモニターを確認してから、玄関を開けて下さい」
「はい。あなたでない事を確認してから、開けます」
あははっ。彼女にしてみれば俺が一番危険だわな。
やっぱ可愛いな。そう思った瞬間、SPでない、雨宮太一が降りてきた。
「本当に、ごめんな」
心からそう思った。
彼女の家を出ると、怪しい人影はないか? もう一度家の周りを確認した。
体を動かしたい気分で、いつも行くジムに向かった。
いくら激しく体を動かしても、頬に残る柔らかい感覚が消えない。目の前には。黒いレースがなん度も通り過ぎていく。
もうダメだ……
やはり気になって、俺は彼女の家まで戻ってきた。
彼女が家にいる事を確認し、部屋の電気が消えるまで、車の窓からじっと見守った。