目と目を合わせてからはじめましょう
気になる再会
〜市川咲夜〜
 
週末の疲れが取れないまま、数日が過ぎた。

 今日は、友梨佳叔母さんがゲストで参加するイベントに、ヘアメイク担当者として参加している。
美和さんの経営している、私の勤める美容室は、幾つもの店舗を構えていて、ドラマやイベントでもヘアメイクを頼まれる。

 かなり大きな会場で、ピアニストの市川由梨佳は個室の控え室を用意されていた。深いグリーンのロングドレスにあわせ、演奏に邪魔にならないように髪型をセットする。メイクも、ステージように少しはっきりさせてあるが、元々が美人なので綺麗なオーラが半端ない。
ヘアメイクの依頼を受けてから、かなり勉強した。イメージ通りに出来たつもりだ。

 「うん。さすが咲夜ちゃんね。腕あげたんじゃない?」

 友梨佳叔母さんから、オッケーをもらえた。

 「ありがとうございます。私も、久しぶりにおばさんのピアノ聞けるから、楽しみにしていたの」

 「本当、久しぶりだものね」

 すっと立ち上がった姿は、堂々として綺麗で、私の憧れの人だ。



 市川由梨佳がステージに立つと、満席の会場から拍手が上がった。ステージの袖から、ピアノの演奏をうっとりと聞く。勿論、髪型やメークにも乱れがないか集中して見る。

 うん?
 あれ?
 この視線は何?

 ステージの反対側に、黒いスーツ姿のあの大男を発見した。

 ぎぇぇっ

 何で、あの男がいるのよ。そういえば、お偉い政治家も参加するイベントだって言ってた気がする。 警護に来ているのだろう。
インカムで、大勢の警護に支持を出している様子がわかる。鋭い視線を会場中にむけている。よく見ると、あちらこちらに黒いスーツの男がいた。

 気にしないようにと思うのに、なぜか彼を見てしまう。
 堂々としていて、機敏な動き。
 ドラマみたいで、かっこいいなあー

 ヤバい、何考えているのよ。私の上に乗って寝てしまった男だ。

 すると、彼の目がこちらに向けられた。
 ええっーー 
 目があっちゃったよ。
 彼が、わずかに頭を下げた。
 どうしよう、頭下げたほうがいいのかな?
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