目と目を合わせてからはじめましょう
青い海の罠
 〜市川咲夜〜

 そして月曜日
 キャリーケースを引っ張りながら空港の入り口を入った。待ち合わせ場所の出発ロビーへと向かう。急の旅行だったが、それなりに用意ができて、後は現地で水着を買えばオッケーだ。

 ロビーの椅子に座る集団を見つけた。

 じーちゃんが手を上げたので、私も大きく手を振った。

 うん?

 なんか嫌な予感……

 また感じるこの視線。


 皆の数メートル後ろに、黒いスーツのあの男が居た。

 ぎゃーーっと悲鳴を上げて大騒ぎしたい心情だが、そうもいかない。


 「みんな揃ったようだな」

 本当に、みんな勢揃いだ。こんなに急で、よく皆揃うものだ。みんな暇なのかな?康介おじさんは、一足先に沖縄に向ったらしい。

 確かに私もクリーム色のロングワンピースでリゾート気分であるが、見事に皆、アロハシャツやら花柄Tシャツ、サングラスに麦わら帽子にと見事リゾート気分満載の集団になっている。その後ろを、黒いスーツの大男が歩くのは何か不自然じゃないだろうか? どこかの組の方と間違われたりしないよね?


 すると、先頭を歩いていたじーちゃんが立ち止まった。

 「雨宮君」

 「はい」

 雨宮は、さっとじーちゃんの横に走ってきた。


 「あのな。サラーっと」

 じいちゃんが言う。

 「サラーっと?」

 雨宮が繰り返す。


 「さりげなーく」

 じいちゃんが言う。

 「さりげなーく?」

 雨宮が繰り返す。


 「と言うわけにはいかんか?」

 「と言いますと?」

 雨宮は、無表情のまま首を傾げた。

 「いいから来なさい。咲夜もついておいで」
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