目と目を合わせてからはじめましょう
 二時間ほどのフライトで那覇空港に到着。

 ホテルに着く前に、悠樹と悠矢の運転する車にそれぞれ乗り合わせ、観光スポットへと向かう。あーだこーだと騒ぐ皆の一歩後ろを、相変わらず無表情な雨宮が居る。 

 四月の終わりの沖縄は、思ったより暑い。

 ベンチに座って涼んでいると、目の前にオレンジ色の飲み物が差し出された。

 「ありがとう」

 差し出されたジュースの先を見ると、雨宮が立っていた。視線は、じーちゃんに向けられたままだが。

 「思っているより暑さが厳しです。適宜に水分を取るようにしてください」

 「は、はい。あの? 怪我はなかったですか?」

 「怪我?」

 雨宮は、不思議そうにちらりとこちらを見た。

 「イベントの時に騒ぎがあったでしょ?」

 「ああ。あの適度で怪我などしません」

 ああ、そうですか。別に心配してたわけじゃないし。


 「それより、私の顔など見たくはないでしょう? なるべく近づかないようにします」

 雨宮はそういうと、また辺りに視線を送りながら去って行った。手に持ったジュースのストローを口に加えた。うわー マンゴーじゃん。めっちゃ美味しい。


 ああは言ってましたけど……

 「おーい咲夜。シーサー買ってやろうか?」
 「おーい咲夜。綺麗なガラスだ見てごらん」
 「おーい咲夜、これ美味しそうだぞ」

 じーちゃんが私と同じ行動するから、必然的に雨宮も近くにいる事になるんです。
 離れても、離れても呼び寄せられる。

 だんだん、どうでもよくなってきた。
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