目と目を合わせてからはじめましょう
 大きなリゾートホテルの玄関に着くと、康介おじさんが出迎えてくれた。南国雰囲気満載のビーチに、大きなプールのあるホテルにテンションがあがる。

 「ねえ咲夜ちゃん。水着買いにいかない?」

 友梨佳叔母さんの誘いに、もちろん大きな声で返事を返す。

 「はーい」


 ホテルのショップへ行き水着を選ぶ。じいちゃんはパパ達とビールを飲みに行ったので、やっと雨宮の視線から外れる事ができた。
 ほーっとしたように思ったのは一瞬で、何だか物足りなさを感じる。あまりに威圧感のある視線に、頭が麻痺してしまったのだろうか?

 「何だか、雨宮さんがいないと不安にならない?」

 「そ、そう?」

 友梨佳叔母さんに雨宮の名を出されて、何故か返事に戸惑ってしっまった。


 不安? そんなバカな。

 「咲夜ちゃん、ビキニにするわよね?」

 まあ、そのつもりではいたけど。

 「うわー 可愛い。どれにしよう?」

 思ったより種類が豊富で迷ってしまう。


 「これなんてどう?」

 友梨佳叔母さんが、白地に黄色のハイビスカス柄がポイントになっている水着を掲げた。

 「う〜ん、それも可愛いけど、叔母さんは決めたの?」

 「これなんかどう?」

 おおー 流石です。白地に黒の花柄に金色のラメのビキニにパラオつきを掲げている。

 「似合うよ」


 結局、コバルトブルーのハイビスカスがアクセントにプリントされたビキニを選んだ。

 「おお、姉ちゃん」

 悠太達がショップに入ってきた。

 「どうしたの?」

 「湯之原のじーちゃんが海パン欲しいんだって」

 「ええ。泳ぐの?」

 「さあな。南国気分を味わいたいだけじゃないのか?」

 「そうなの? これなんかどう?」

 じいちゃんお好きそうな、赤いハイビスカスの海水パンツを選んだ。

 「ああ、いいんじゃねえ」

 悠太は海水パンツを手に取った。


 「姉ちゃんは、どんなのにしたんだ?」

 「これよ」

 私は、自慢げにコバルトブルーのビキニを掲げた。

 「へえー」

 弟三人は、ろくに見もせず返事だけした。

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