目と目を合わせてからはじめましょう
 水の中にいるとはいえ暑い。何か飲もうかな?

 プールを上がり、プールバーへと向かう。バーの椅子に座ろうと思ったが、近くで座っている男の人がチラチラとここっちを見ていて嫌な感じだ。

 すると、目の前に大きな影ができた。

 「お爺様が、トロピカルジュースが欲しいそうです。お嬢様に、あちらで一緒に召し上がるようにとの事です」

 私に話しかけているのだと思うが、視線はじいちゃんの方に向けられている。

 「そうですか。ありがとうございます」

 ウエーターが運んでくれると言うので、雨宮と一緒に、じーちゃんの座るテーブルに向かう。
 ああ、お揃いの水着姿で並んじゃったよ。気をつけているのに、なぜ上手くいかない?

 そんな事を考えて歩いていると、バサッとと肩にシャツが掛けられた。雨宮が着ていたものだ。

 「日焼けするぞ」

 雨宮は、そう言い放つとスタスタと歩いて行ってしまった。

 キューン

 何で? 胸が痛い?

 急に、素で話すのやめて欲しい。

 雨宮のシャツは大きくて、お尻まですっぽり隠れる。お気に入りのビキニが隠れてしまうが、確かに日には焼けない。


 じーちゃんと友梨佳叔母さんと並んで座り、ハイビスカスの飾れれたジュースをストローで飲む。

 「雨宮君、落ち着かないよ。君も座って飲んだらどうだね?」

 そうだよ落ち着かない。私たちの斜め後ろに立っって監視されていると。しかも、オレンジ色のトロピカルジュース持って。


 「しかし、任務中ですので」

 「そんな怖い顔していたら誰も近付かんよ。座っていてても警護はできるだろ?」

 「はあ」

 雨宮は渋々と、近くの椅子に腰を下ろしたが、姿勢を正したまま、周りに目を向ける姿はかわらない。

 「はあー。かたい男だな」

 じーちゃんはため息をついて言った。
< 31 / 171 >

この作品をシェア

pagetop