目と目を合わせてからはじめましょう
 こんなじいちゃんにさえ、力抜く事なく警護する雨宮の姿に、いい加減な人間ではない事だけは確かな気がした。

 「海で、泳いでくるわ」

 私は、立ち上がると借りたシャツを脱いで、雨宮に返した。

 「ありがとうございます」

 「いえ」

 何故か、シャツを受け取った彼の眉間に皺がよってる。いつも無表情なのに珍しい事もあるもんだ。


 ビーチチェアに置いてあったラッシュガードを羽織ると、ビーチ用のバスタオルを手に取って歩き出した。

 「おお、わしも行くぞ!」

 「じいちゃん大丈夫?」

 「もちろんだ。沖縄に来たんだから、海に行くもlのだろ?」

 じいちゃんが来れば、もちろん雨宮も後をついてくる。


 「わっー」

 私は、両手を広げて海に向かって走った。プライベートビーチではあるが、人はそこそこ居る。


 「おお、冷たいのー」

 じいちゃんは、ちょこっと波に足をつけると、満足したようでビーチのソファーに座ってしまった。
 友梨佳叔母さんも、レンタルしたソファーで横になっている。


 よし、シュノーケリングだ。と、思ったのだが、ビーチではシュノーケルを付けて泳ぐにのは禁止らしい。仕方なく、ゴーグルだけつけて、魚を探す。

 ブルーの魚の群れを見つけると、凄く綺麗で嬉しくなる。


 「あっちに、もっと大きな魚がいますよ。行ってみませんか?」

 魚探しに夢中になっていて、知らぬ男が近くに来ていた事に気づかなかった。
 せっかく、楽しく潜っていたのに。

 「泳げないないので、深い所はちょっと」

 さりげなく断ってみたのだが。

 「それなら、この辺りで綺麗な魚を探しましょう」

 あー。そういうの勘弁なんだけど……

 少しづつ、その男から離れているのに、段々近づいてくる。
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