目と目を合わせてからはじめましょう
 その時、

 バシャバシャ!

 大きな物体が、私とその男の間を割って泳いできたかと思うと、ジャバーンと海の中から出てきた

 もう、体格でわかってしまう雨宮だ。


 雨宮が男の方を向いただけなのに、男は逃げるように遠ざかって行った。

 「どうしたんですか?」

 海から顔を出している雨宮に向かって言った。

 「お爺様が、本当に泳げるのか? 見せてみろと言うものですから」

 「はあ? そんな依頼者の指示も聞くんですか?」

 「ええ。信頼が大事な仕事ですので」

 「大変なお仕事ですね」

 「いえ」

 雨宮は表情ひとつ変えず、またバシャバシャと泳いで戻って行った。


 よし、魚みつけるぞ!

 魚探しに夢中になっていると、時々、雨宮が泳いでやってくる。

 じいちゃん、そんなにSPの泳ぐ姿を確認したいのだろうか?


 青く広がる海を見渡すとパラセーリングやバナナボードなどマリンスポーツも充実しているようだ。

 よーし。

 私は、海から上がると、ビーチハウスに向かった。


 何をやってみようかな?

 ジェットバイクが目に入った。前から乗ってみたかったやつだ。
 乗り方を教えてもらって、自分で枠の中を運転するものと、運転手の後ろに乗って沖まで行くものがある。どちらにしようか?

 ビーチハウスの、日焼けしたアロハシャツを着た男の人が説明してくれる。

 「僕が運転していくから、沖まで行っても大丈夫だよ。珍しい魚も見れるし、風きって気持ちいよ」

 そうだな、自分で運転もしてみたいけど、せっかくだから沖まで行きたいかも。

 「そうですね。沖まで行こうかな?」

 「いいね。行こう行こう」

 ビーチハウスの男がノリよく言ってくる。


 すると、目の前に黒い影ができた。
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