目と目を合わせてからはじめましょう
守り、守られ
 市川咲夜〜

 空港からの途中で適当に夕食の惣菜を買って、そのまま自宅に戻った。

 玄関の鍵を開けようとして、ふと門の前の小さな花が視線に入った。あれ? こんなところに花なんて植えてあったかな? ママかな?
 それほど気にもせずに、家の中に入った。


 沖縄、楽しかったけど疲れたな……
 雨宮とは、そのまま別れてしまったが良かったのだろうか?
 あんな風に啖呵を切って空港を出て来てしまい、雨宮に挨拶するタイミングも余裕もなかった。


 リビングの灯りを付けて、バサっとソファーに座った。

 ガタンッ

 庭で物音がした、風だろうか?

 窓を開けて確認すればいいのだろうけど、なんだか不気味な気がしてカーテンを閉めた。不審者も作り話だったし、別に怖がることなんてないのは分かっている。
 沖縄では鞄に入ったままになっていた、防犯ブザーを取り出した。これを押せば警備会社に届くと雨宮の言葉を思い出し、ほっと息をつく。あんな不審者の作り話のおかげで、過敏に反応してしまう事が腹立たしい。


 ああ、また思い出してしまった、雨宮の事を。あんな姿を見られたり、あんな事を言ったりと思い出すと、顔が冷たくなったり、熱くなったり繰り返す。じいちゃんの警護も終わり、きっと雨宮はほっとしているよね。



 それから数日後。講習会が長引いて、いつもより帰宅が遅くなってしまった。

 玄関の鍵を開けようとドアノブに手をかけると、庭の方からガタッと音がした。何の音?

 「誰かいるの?」

 返事はない。

 感でしかないが、鍵を開けない方がいいと思った。人のいるところに逃げよう。くるりと向きを変えると。

 「遅かったね。また、出かけるの?」

 えっ?

 誰?
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