目と目を合わせてからはじめましょう
 「いえ。仕事ですから」

 雨宮の言葉に、何故か隣にいた高木が、ふっと笑った。


 「咲夜、怪我はないか? 不審者が出てると聞いていたから心配していたんだが、全く恐ろしい話だ」

 「えっ? 不審者ってパパ達の作り話じゃないの?」

 「はっ? なんの為に、そんな嘘つかなけれないけないんだ?」

 「それは…… 何かの策略かと思って……」

 「何を言っているんだか? まあ、タイミングってやつを計算したぐらいのもんだ」

 パパは、意味ありげに眉を上げた。


 「タイミングを計算て、どう言う意味?」

 「えっ? 落ち着いたら話すよ。そんな事より、もう、帰れるのか?」

 「うん。もう事情聴取は済んだから、帰っていいって言われた」

 パパの話が気になるが、警察署の居心地は決して良いものではない。早く帰りたい。


 「そうか。それじゃあ、一緒に帰ろうっと言ってやりたんだが……」

 「えっ?  迎えにきてくれたんじゃないの?」

 「それが、これからママと北海道へ行く事になっているんだよ。困ったなあ」

 「じゃあ、悠矢の家に泊めてもらいなさい」

 ママが、悠矢の方を見て言った。

 「えっ。俺、困るよ。これから、じいちゃんを迎えに行かなきゃなんだから。しばらく静岡の病院で足の検査を兼ねて静養するらしい」

 気付けば、外はうっすら明るくなってきている。


 「すまない。雨宮くん。しばらく咲夜を預かってもらえないだろうか?」

 「えっ。なにバカな事いってるのよ。そんなわけには行かないでしょ。常識ってもの考えてよ!」

 パパの提案に、呆れてしまう。


 しかし、しばらく黙っていた雨宮の口から出た言葉は

 「承知しました」

 だった……
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