目と目を合わせてからはじめましょう
 「ちょっと、いいよ。一人で居られるから!」

 慌てて、パパとママに訴えるが……

 「じゃあ、雨宮さんよろしくお願いします」

 パパとママ、悠矢は頭を下げて行ってしまった。まさかの高木までも行ってしまった。


 この男、何考えてるのよ。なんでも『承知しました』と言えばいいってもんじゃない。

 「いくぞ」

 雨宮の低い声が響いた。


 断りたいのに、この時間じゃ帰る手段もなく、雨宮の後ろに着いて歩くしかなかった。


 何か怒ってるみたいで怖いよ。確かに、私の面倒見なければになってしまい、怒るのも無理ないと思う。怒るくらいなら引き受けなきゃいいのに。


 雨宮に促され、悠矢が運転していた車の助手席に乗り込んだ。

 車が警察署の門を抜けると、雨宮の大きな溜息が漏れた。

 「だから気をつけろって言っただろ。危機感が無さすぎるんだよ」

 「ごめんなさい……」

 しゅんとして謝った。

 でも、何を気をつければ良かったんだろうか?


 「とにかく無事でよかった……」

 雨宮は、本当にほっとしたように肩を落とした。仕事柄、やはり無事だったという実感が強く出るのだろうか?


 「はい。ありがとうございました」

 「あの状況で、玄関を開けなかったのは正しい判断だと思う。あのまま家に押し込まれた可能性が高い。それに、防犯ブザー忘れてなかったんだな。だが、人通りの少ない公園は危なかったぞ」

 「少し前から、家の外で物音がしたりして、不審な感じがしたので……」


 「何? だったら何故、もっと早く言わなかったんだ!」

 また、怒られた。


 「言うって、誰にですか?」

 「うっ。それは……  警察とか、警備会社とか、俺だって……」

 そのまま雨宮は黙ってしまった。


 静かになってしまった車の中、窓の外を見ているうち、思っているより緊張していたのだと思う。車の中に居ることに、ほっとしたせいか、だんだん眠くなってきた。


 なんだか、大きなブランコにでも乗っている気分だった。
 安心するような、気持ちいい……
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