目と目を合わせてからはじめましょう
 うーん。
 よく眠った。

 寝たまま、ぐーっと腕を伸ばした。
 うん? ここはどこ?


 「あんな事があった後でも、しっかり眠れたようで何よりだ」

 この声は?
 視線だけを動かし、辺りを見回した。

 ああー

 黒のスーツ姿でなくTシャツにスラックス姿の雨宮が、開けた寝室のドアに寄りかかり立っていた。

 車の中で寝てしまった事が蘇ってきた。一気に血の気が引く。
 でも、どうして?

 「ここは?」

 「俺のマンションだ」

 という事は、雨宮に運ばれて来たとしか考えられんない。あの、ブランコに乗ってる感覚は……嫌な予感しかしない。


 「どうして、起こしてくれなかったんですか?」

 「はあ? いくら起こしても起きなかった」

 「そんなバカな……」


 「だから、危機感が無いって言うんだ。もう少し警戒したらどうだ?」

 「そんな事、言われたって、寝ちゃったものは仕方ないじゃない」

 「はあっ? 仕方ない? まあいい。疲れたんだろ。眠れたなら、何よりだ。腹減っただろ?」

 半分呆れたように言われl、時計を見るととっくに昼を過ぎていた。

 ぐぅーっ

 そう言われると、お腹の虫は鳴るものなんだと知った。

 「はい」

 私は、力無く頷いた。
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